タニグチコウヨウ.blog

しょーもない一瞬一瞬を切り取っていく。

十九歳の地図/中上健次

この時代の19歳はこんな感じだったのか…と、少々拍子抜けしてしまう。
 
若者が社会に対しての閉塞感や今の境遇への不満を感じているというのは分かる。が、それを赤の他人に迷惑をかけるという形で解消しようとする奴は今はほとんどいないだろう。
 
当時これを読んだ若者は本当に共感したのだろうか。
 
汗と精液の匂いで充満した部屋で、30代の狂った男と同居しながら、予備校にも行かず新聞配達のアルバイトでなんとか飯を食う「ぼく」は、行き場のないモヤモヤを抱えている。どん底である。
ただ、唯一の救いが、赤の他人に迷惑電話や爆破予告をすることだった。それによって、なんとか社会を変えようとしていた。
 
イライラして親にあたったりするのとは違う。
何か大きなことをしたい、認められたいというだけでもない。
ただ、犯罪まがいなことをして、世の中を少しでも変えたいだけなんだ、「ぼく」は。うん、分からなくもない。でも、そんなことをしても何も変わらないことを知ってしまった。空虚な心だけが残り、ラストはとうとう涙を堪えきれない。
彼にはそうするしか救いがなかったのだから、最後の砦を崩された思いだっただろう。信じていたものを失う時が、生きていて一番つらいんです。そうでしょ?
 
40年以上前に書かれた文章でありながら、人間の本質をついているのは間違いない。
 
 
僕は気怠くって動くのも面倒なことが多いから、わざわざ外に出て迷惑電話や爆破予告をするその無駄なエネルギーにこそ違和感を感じた。
同時にそんな主人公の溢れるエネルギーが羨ましかった。

 

十九才の地図 (河出文庫)

十九才の地図 (河出文庫)