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タニグチコウヨウ.blog

しょーもない一瞬一瞬を切り取っていきたい。

香港旅②~白熱の値段交渉~

2日目は昼から行動開始。
旅のお供ビーチサンダルを買ったり、トラムに揺られ香港島を巡ったり。土地勘がついてきて、だいぶ香港に慣れてきた。そのあとは、香港のマグネットを探し求めて、歩き回った。
 
僕は海外のマグネットをコレクションしている。海外に行くと決まって、なるべく安く、多くの種類を買うようにしている。逆に自分へのお土産はそれ以外はほとんど買わないのだ。それくらい好きなのである。
 
イッテQで内村さんがマグネットおじさんという企画を結構前にやっていたこともあり、このようなマグネットの存在を知っている人もいるだろう。
 
今回はマグネット好きの僕がこれから先も避けることのできないであろう、値段交渉について書こうと思う。
露店での買い物は基本に”言い値”(値札が置かれておらず、その時々で変化する)であり、交渉次第で値段を下げることができるのだ。
 
 
夕方、九龍の旺角という駅の近くの女人街という露店通りに行った。入り口からも半端じゃない熱気が伝わってくる。
 
入ってすぐ、最初の露店に置いてあるマグネットが目に飛び込んできた。そして、値段が書かれていない。避けられない勝負を予感させる。
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ああ、始まるんだ…。3年前に東南アジアでやって以来の値段交渉である。少し不安な気持ちになりながらも、気を引き締める。
 
いよいよラウンド1のはじまりだ。
 
お店のおばさんが近寄ってくる。年は50代後半であろうか。僕はマグネットを物色しつつ、おばさんの方にチラリと目を移す。その風格に思わずたじろぐ。歴戦の商売人であることが一目で分かった。おばさんの和やかな表情が常勝の自信ゆえのものである、そう感じた瞬間、
「ワン、ナインティーン!セブン、ワンハンドレッド!」
と、挨拶代わりのジャブを繰り出してきた。
 
1つで19香港ドル、7つで100香港ドルということだ。約1450円。
 
今日のお昼に行った、室内の小綺麗な土産物屋で7つで98香港ドルだった。ああ、やっぱりお昼の店で買わなくてよかったと思った。露店の最初の言い値は必ずふっかけてくるからだ。これは高すぎる。
 
対して僕は、訳が分からないという表情で、さっき行った店の方が安いよ、と余裕でジャブをかわす。
普通の店での相場を知っている分、おばさんに対して有利に立つ。序盤、一歩リードの展開。
 
おばさんは仕方がないという表情で相手を諭すように言う。「エイト、ワンハンドレッド、OK?」
 
僕は首を横にゆっくり振りながら、ノーとはっきり言う。
 
それを聞いたおばさんは急にイライラし始め、明らかに不機嫌な表情になる。その表情のまま「エイト、ワンハンドレッド!」「ノー」のやり取りを数回繰り返す。
 
こちらから「ナイン?」とは絶対に言わない。そしたらそれで交渉が終わってしまう可能性があるので、必ず我慢して相手の出方を窺う。まだまだいけると思ったからだ。交渉を有利に進めるためには、いかに相手に言わせ続けられるかが大事なのである。
 
おばさんの連続パンチに対し、ノー一点張りの防御姿勢で応戦。怯んで「OK」と言ってしまったら、そこで試合終了だ。
 
数秒間のにらみ合い。
 
しびれを切らしたおばさん。「…OK、ナイン」
 
よしよし、いいぞ。
しかし、この時手元に80香港ドルしかなかったのと、まだ女人街に入ったばかりだったので他の露店も見てみたいという気持ちが芽生え、お金無いからまたあとで来るよ、と伝えて歩き始めた。
もう一つ意味があった。客側の最終手段、帰るフリだ。失敗するとそれきりだが、相手が追いかけてくれば、こちらが有利な状況に一気に傾く。
 
歩き始める。背後のおばさんの反応を気にする。10mほど歩いたところで、案の定、おばさんの「テン!テン!」と叫ぶ声が聞こえた。
 
とっておきの右ストレートが綺麗に決まった。もうここまでくれば十分だ。予想以上の結果に僕は満足していた。
 
僕は100ドル持っていなかったが、ひとまずおばさんの元まで戻って、再び必ず帰ってくると伝えた。しかし、それを聞いたおばさんはとても不機嫌な顔になった。このとき、値段には満足だけど、正直このおばさんからは買いたくないなと思った自分がいた。
 
ここからおばさんが一気にヒートアップする。
本当に80ドルしか持ってないのか見せてみろとものすごい剣幕で迫ってきたのだ。仕方なく財布から80ドルを出して見せた。その時だった。おばさんは80ドルを僕の手元から奪い取り、叫び出した。
 
「エイト、エイティー!エイト、エイティー!」
 
驚いた僕が取り返そうとすると、僕の手をぴしゃりと叩き、叫び続ける。僕は「It's mine!」とできるだけ凄みながら、取り返そうと試みる。周囲の視線を全身に感じる。
 
なんとか取り返した瞬間、なんとおばさんは僕の前頭部をこれまたぴしゃり!と、父さんにも殴られたことないのに!連続リアル平手打ちに面食らってしまった。父さんにも殴られたことないのに!
イテテ。なかなか強い…。
 
急な出来事にあっけにとられ、僕は信じられないという表情でおばさんをにらみ返す。
 
でも…ここは香港。相手の土俵だと思い、すぐに立ち去ることにした。何しろ数百軒ある露店の内の一軒目。まだまだこれからなのだ。
 
気を取り直し、その数軒先で最初の露店よりマグネットの品揃えが良いお店を発見。来るラウンド2に向けて気を引き締め直す。
 
近寄ってきたのは、今度はお姉さん。(40代と見られるが、先ほどの平手打ちおばさんと区別するために、お姉さんと呼ぶことにする)
会話はテンポ良く進んだ。
 
「How much is it?」
「ワン、エイティーン」
「冗談はヨシコさんすわ。さっきのお店では10個で100ドルだった、あと今80ドルしか持っていないけど、どう?」
「really?! …じゃあ、8個で80ドルでいいわ」
 
僕の言っていることを信じてくれたのは運が良かった。他の店であれ、「テン、ワンハンドレッド」まで交渉したことを評価してくれたのか、案外あっさり値を落としてくれた。
正直、さっきのおばさんのリアル平手打ちにショックを受けていたのだが、僕はここでダメ元でもうひと踏ん張りだけしてみることにした。
何を言われてもノーとしか言わない。「ナイン」という言葉を聞くまでは。
 
十数秒のにらみ合いでもお姉さんの態度が変わる気配はない。僕はこのお姉さんに対しても奥の手を使うことにした。
 
店から歩き始める。迷っていると思わせないように足早に立ち去る。
数m歩いたところで、ついにお姉さんが折れてくれたようだ。
「ナイン、エイティー!」
 
(カンカンカーン!)
 
試合終了のゴングとともに、僕と女人街の勝負は幕を閉じた。
 
最初のふっかけが7個で100香港ドル、1個あたり14.1香港ドル
最終的には9個で80香港ドル、1個あたり8.9香港ドル
マグネット1個の値段が5.2香港ドル≒80円も変わるのだから、値段交渉はやってみないと分からないし、やらざるを得ないのである。
 
その後、お姉さんは僕がマグネットを選んでいる間、ずっと僕の真横で舌打ちをしていた。そんなプレッシャーを完全にスルーして5分以上かけて選んだ9個のマグネットを、今度はビニール袋に入れてくれず、そのままリュックに入れろと言ってきた。僕はマグネットが傷つくのが嫌だったが、しぶしぶリュックにしまった。これくらいはもう慣れていくしかないと思った。
 
終わった瞬間、ホッとした。終わったこと自体が何よりも嬉しい。
 
値段交渉は真剣勝負だ。決して楽しいだけのものではない。値段が書かれておらず言い値である以上、そして安く買いたいというこちらの心理がある以上、交渉は避けられない。
 
こちらは安く、買いたい。あちらは高く、売りたい。お互いがその心理をぶつけ合った結果が、金額となって表れる。それが値段交渉である。平手打ちおばさんのように、無理やり買わせようとしてくるケースもあるが、意識すべきは、自分が納得した値段なら買えばいいし、納得していないなら買わなければいいというシンプルなことだと思う。店側も納得していなかったら、売ってくれないのだから。
 
でも、やらなくて済むなら値段交渉はしたくない。今回のようなケンカすれすれにならないためにこちらが妥協するというのも、どうも納得がいかない。数ドルの差などは気にしないほどの金持ちになったら考えが変わるのか。そもそも店員が怒るのは演技なのではないのか。帰ってから色々なことが頭に浮かんだ。
 
でも、一つだけはっきり言えることがある。
昨日また別の店でのこと。僕が欲しいのと少し違う種類のマグネット(それでも一個あたりの値段はほとんど変わらないと思う)を5個で89香港ドルとふっかけられて、迷った末にその値段で買っていくインド系の観光客を目の前で見た。そもそもふっかけられていることを分かっていない様子だった。この時はひどい、可哀想と思う私がいたが、振り返ってみて考えが変わった。彼らが納得して買ったのだから、それはもう仕方のないことである。露店側のラッキー。
無知は敵である。
 
※翌日追記 
昨日とは別のナイトマーケットに行ったら、まさかの言い値ではない出店を発見。

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!!!
 
6個で50香港ドルて(笑)
 
昨日の努力はなんだったの(笑)
 
他の露店のほとんどが言い値の中、ここのおじさんはだいぶ先駆的なことをやってらっしゃいました。(しかも安い)
値段交渉せずに済んだのはありがたかったです。友人へのお土産用に6個買えて良かったです。
 
明日はマカオに行きます!
それでは!