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少女たちの空想は現実となる / 映像研には手を出すな!01

マンガ

空想はほんとうに楽しい。

 

僕はこれまで生きてきた時間のうち、どれほど空想に費やしてきたか分からない。

 

正門からなにやらすごい化け物が襲来して、それを僕が変身して食い止める。幼稚園の頃の空想だ。どんなに強い技を使ったか、いかに自分の圧勝だったか、今でもかなり正確に覚えている。

その後も小、中、高と空想の幅やスケールは大きくなっていき、大学生の今も空想は止められない。

 

そんな僕のような空想好きにぴったりな作品がこちら。

大童澄瞳作『映像研には手を出すな!』

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~あらすじ~

浅草みどりはアニメ制作がやりたいが、一人では心細くって一歩が踏み出せない。

そんな折、同級生のカリスマ読者モデル、水崎ツバメと出会い、実は水崎もアニメーター志望なことが判明し・・・!?

金儲け大好きな旧友の金森さやかも加わって、「最強の世界」を実現すべく電撃3人娘の快進撃が始まる!!!

小学館HPより) 

 

この作品の一番の魅力はなんといってもどこまでも広がっていく空想の世界だ。

 

主人公である浅草の

「私の考えた最強の世界。それを描くために私は絵を描いているので設定が命なんです。」

というセリフが物語っているように、作中には日常の風景から一気に空想の世界へ幾度となく飛躍していく。

ある時は屋根や壁に修理が必要な部室から、壊れてしまった宇宙船を空想する。浅草の空想はどんどん膨らんでいき、宇宙船の詳細なデザインや機能から、無重力化でもラーメンを啜れる重力制御どんぶりまで……空想が止まらない。

 

ただ、空想を空想では終わらせない。描いた空想の世界をアニメーションにしようと3人娘が協力し合って奮闘する。浅草が設定を語り、水崎が人物を描き、金森がバックアップを固める。魅力的なチームワークだ。

 

その魅力は個々のキャラクターにも表れている。

最も現実的でお金や時間に厳しい金森と、どんどん空想の世界へ行き現実を疎かにしがちな浅草や水崎のやり取りは常に本音かつ、コミカルに描かれている。

 

例えばはじめて部室を訪れたシーン。

 

浅草「ねえねえ。ここが我々の、拠点になるんだよね。」

 

水崎「……そうだよ?」

 

浅草「私達だけの別荘なんだよ!ソファーとかテレビとか本棚置いて快適にしようじゃないか。」

 

金森「物持ち込む前に建物の改修が必要だと思いますが。」

 

水崎「トイレは二つぐらい欲しいよね。床暖房入れてフローリングにできないかな。あと私シアタールーム欲しかったんだ!」

 

浅草「それならついでだから、屋根は可動式に!」

 

金森「はあ!?」

 

はしゃぐ2人を横目に常に現実を見つめる金森が非常に良い味を出している。

 

こちらもご紹介したい。予算審議委員会へのプレゼン用の動画を作ろうとするが、制作のペースが相当遅いことに気づいたシーン。ここでは作画に詳しい浅草の主人公らしい機転の利いたセリフも飛び出る。

 

金森「今日以降24時間労働で30日動画を描け!」

 

水崎「無理だよ!30日徹夜なんて!」

 

金森「1日48時間労働で15日に譲歩します。」

 

水崎「2×222くらいの違いしかないわ!」

 

 

浅草「今10秒くらい増やしたよ。」

 

金森「どんな魔法使った。」

 

浅草「風景だけのカット入れたじゃよ。全シーン動画描く必要はなかろう。」

 

金森「よし!もっとやれ!」

 

浅草「イェス!マム!」

 

この3人の強烈な個性のぶつかり合いから生まれる面白さ。会話のキャッチボールのスピード感。

 

作者特有のセリフの立体感にも注目したい。

 

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(コミックナタリーより)

 

このナナメに浮かぶセリフ。オンラインゲームのチャットを想起させるような一瞬一瞬の言葉の切り取り。

 

僕はこのマンガの絵が好きだ。人物はシンプルかつ表情豊かに描き、作品の世界観、空想のイメージを細かく綺麗に描いている。コマ割り、セリフにも躍動感がみなぎる。

それと女子高生3人娘という身近な設定が化学反応を起こして、この作品の魅力の奥深さとなっている。

 

 

この作品は、海賊王になるお話でも、宇宙人から地球を守る話でもない。

 

しかし、少女たちの夢がつまっている。

僕らの冒険心をくすぐる圧倒的なワクワクがつまっている。

 

人はなぜ空想するのか。僕の答えは、空想の中では誰しもが最強になれるから。

 

でもそれを形にするためには様々は困難を乗り越えなくてはいけない。でも、彼女たちならぶっとんだ空想でさえもアニメーションとして形にしてくれる、そう思わずにはいられない。

 

最後に一つ。作者の大童澄瞳さんは現在23歳だそうで、ほぼ同年代の若い才能に嫉妬と尊敬を込めて応援したい。第2集は今夏発売予定。楽しみで仕方がない。

 

ぜひ手に取ってみて読んでみてほしい。

 

 

映像研には手を出すな!(1) (ビッグコミックス)

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